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隣でノッポはうたた寝をしている。俺は鼻歌を歌って、ガラガラの道路を気持ちよく運転している。ここまでは良かったんだ。俺がヒッチハイクしている男を見つけてしまうまでは。
その男は大きなリュックを背負った男で、なんだか放浪者らしい汚さだった。親切な俺は車を端に寄せる。男は急いで俺の傍にやってきた。目深に被っていた茶色の帽子を取り、もじゃもじゃ頭が出てくる。
「どうもぉすみません。トウキョウまで乗せてくれませんか?」
男は間近で見てもヒゲ面で、顔がわからない。声の感じから二十歳前後だと思うけど。
「俺たちもトウキョウに行くところだから、乗ってきな」
「ありがとう。僕の名前はホタ。君は?」
「俺の名前はチビ」
「チビ? 本当に?」
ホタは怪訝な顔をする。俺は慣れているので笑う。
「ああ。チビだ。深くは聞くなよ」
「オーケー。わかったよ、チビ。よろしく」
「よろしく」
ホタと握手をするが、思ったよりもゴツゴツしている手に驚いた。もしかしたら、力仕事をしているかも。
ホタは後部座席に乗り込み、再び車は走り出す。
「ところで、僕はお隣さんに挨拶したほうがイイかな?」
言われて見てみれば、珍しくノッポが寝こんでいた。いつもなら目覚めているはずだけど。
俺はちょっと考えて答える。
「別にいいんじゃん。どうせそのうち起きるだろ」
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