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第四話 レクイエム
「え…ジョリー?」
女の子は二人組だった。5年生くらいのお姉さんだ。
二人は駆け寄り、
そしてジョリーを挟んで向かい合いしゃがみ込む。
「…クスン…ヒック…」
やがて二人のすすり泣きが聞こえてきた。
出来るなら、お姉さん達と一緒にジョリーの傍に行きたかった。
…でも、出来なかった…
ワタシハジョリーヲミゴロシにシタカラ。
アノオトコノタチトオナジダ…
その場にしゃがみ込み、うずくまる。
そして両手で頭を抱え、声を押し殺して泣いた。
ふと我に返り、そっと様子を伺うとジョリーもお姉さん達も居なくなっている。
何やら、少し離れた場所が騒がしい。
竹林に身を隠したまま木々の隙間から、そっと様子を伺う。
その場所から少し離れた先は一面田んぼが広がっている。
一部、野原のようになっている場所があり、
そこにスコップでお爺さんが穴を掘っている様子だ。
どうやらお姉さん達は、近所に住む大人達を呼んできて、
ジョリーを埋めてあげようとしているようだ。
お婆さんは自宅から切り取ってきたのだろう、
菊?と思われる黄色と白の花束を手に、
お爺さんが穴を掘っているのを見守っている。
お姉さん達は、野原に生えている草花を摘んで、
花束を作ろうとしているようだ。
…そうか。
自分で止める事が出来なかったら、
大人達を呼んで助けて貰えば良かったんだ…
そんな簡単な事すら思い浮かばなかった自分の浅はかさ、
無知さに嫌悪感が湧いた。
その場に縛りつけられたかのように動けなかった。
ただ呆然と、その様子を竹林から伺っていた。
やがて穴は掘り終わり、
お姉さん達は集めた草花をその穴に敷き詰めていく…。
そして
ジョリーはご夫婦とお姉さん達に丁寧に運ばれて、
そこにそっと寝かされた。
そして全員で両手を合わせ、祈りを捧げていた。
私も自然に手を合わせ、目を閉じ
…ごめんね。ごめんね。助けてあげられなくて…
と謝罪した。
ジョリーの穏やかに澄み切った瞳が、
脳裏をかすめていく…
不思議と心が落ち着くのを感じた。
チガウヨ、ジョリーハオコッテルヨ。
ユルシテクレルハズナイジャン…
私は私を許せなかった。
再び現実に返ると、お姉さん達は頭を下げて、
自宅に戻っていく老夫婦を見送っている姿が目に入った。
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