第四話 レクイエム

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程なくして部活動を終え、 帰路につくのであろうと思われる 5.6年生のお姉さん達が6人程通りかかる。 そして次々とジョリーの元へと向かって行った。 お姉さん達はしゃがみ込み、 ジョリーを優しく撫でる。 涙を拭きながら。 そして6人のお姉さん達は、 野原に生えている草花を摘み始めた。 そしてそれぞれが花束を作り、 ジョリーにそっと添えていく…。 やがて、夕方4時を知らせる音楽が鳴り響いた。 …私は逃げるようにして足音を忍ばせ、帰宅した。 何も出来なかった自分が、情けなかった。 罪の意識で胸がモヤモヤザワザワした。 翌日、いつものように集団登校した際、 ジョリーが静かに眠っている場所に人だかりが出来ている。 皆、ジョリーに手を合わせていた。 そしてそれぞれに草花を添え、学校へ向かって行った。 各班順番に規則正しく、 まるでそれが習慣づいているかのように。 私達の班もそれに合わせ、 草花を摘んでジョリーに添える。 …ジョリー、ゴメンね… そして祈りを捧げてから再び学校へ向かった。 誰も一言も発する事なく、 それらは行われた。 不思議に温かい雰囲気に満ちていた。 それから約二日後、 ジョリーは老夫婦によって埋められたそうだ。 そしてパンジーの種を蒔いたそうだ。 担任の朝の連絡事項でそう発表された。 ジョリーがどれだけ多くの皆人に愛されていたのかが、 よく分かる現象だった。 8人の男の子達がどんな様子だったか、 覚えていない。 正確に言えば、 彼らを見ると同罪の自分の事も思い出されて 意識を向けなかったのである。 ジョリーの事は、 「罪悪感」という仄暗いカオスとして 以降私の胸に棲みついていく。 そこを見ないように、 「忘れてしまう事」によって封印を施した。 やがて植えられたパンジーは、 深い紫と鮮やかな黄色のコントラスト、 フレッシュなオレンジ、清純な白の 三種類を見事に咲かせて魅せた。 ジョリーは地球の一部として再生した。 そんな風に思えた。 けれども、 「罪悪感」という仄暗いカオスは この作品を書いている現在に至るまで 棲み続ける事となる。
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