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今となっては考えられない事だが、
当時野良犬がいる事は珍しくなかった。
だから、
学校に迷い犬が遊びに来る事などよくある事だった。
教師たちは、子供たちが噛まれてケガをしたら大変!
とばかりにすぐに保健所に連絡をしていた。
それが、どんなに小さな子犬だったとしても。
野良犬は噛まれたら病気になるから、
近寄ったらいけません。そう教えられていた。
だから、
大人が保健所に連絡する事はそう特別な事ではなかった。
保健所に電話する事に難色を示し、
泣き出す子も何人かいた。
私はその事が何を意味するのか知らなかった。
だから、その子達が何故泣くのか不思議だった。
…あまりにも無知だった…。
勿論、教師側の心情も理解はできる。
その大きな白い犬は、ピレネー犬のような大型犬だった。
非常に人懐く、また穏やかで優しい子だった。
ある時突然、通学路に出没するようになった。
一週間ほど前からだろうか。
彼は通学中の生徒と戯れながら、一緒に学校まで歩いて行った。
まるで子供たち一人ひとりを守るかのように。
私は大型犬には恐怖感があった。
何故なら…
近所で飼っている黒いシェパードがいた。
彼の前を通る度に歯を剥き出し、
唸り声を上げ威嚇し、盛んに吠え立てるからだ。
彼は檻の中に入っていたけれど、
もしその檻が空いていたら…
と思うと、生きた心地がしなかった。
白い犬とその黒いシェパードは全く別のものだが、
どうしてもその恐怖感から大きな犬は怖い、
と刷り込まれてしまったのだ。
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