252人が本棚に入れています
本棚に追加
リュオとトチカは女学院の制服を身に纏い、セントフェアル女学院に足を踏み入れる。
今は剣の聖女祭というミュステルムの伝統行事の真っ最中らしく、学園も一般開放されており潜入するのに打ってつけだ。
「ケルビムが白亜の城ならフェアルは水晶の館って感じかな?」
蒼を基調とした近代的な作りの学舎。建てられて新しいのもあって洒落ているというか洗練されている。だが、その理由は…
「旧校舎は戦火で焼けたのですわ。ミュステルムは敗戦国ですの。」
そう、先の戦いでミュステルムとフレイディアはヴァリスタンに負けているのだ。
降伏したフレイディアの紅蓮騎士団は取り込まれ、最後まで争ったミュステルムの蒼天騎士団は解体され水天騎士団に造り直された。
「ごらんなさい、あれが戦争の爪痕ですの。なんでも戦争を忘れないためにわざと残しているとのことですわ。」
旧校舎があったと思われる場所には焼け残った残材、すすで黒く汚れた壁らしきものがところどころに残っている。
「この悲劇を繰り返させないためにも…ネヴァを止めなきゃね。」
今のままでは近々、アーエリアスは同じように戦火に包まれるであろう。リュオの身体を乗っ取ったネヴァの率いる紅蓮騎士団が暗躍しているからだ。
「妹ちゃん、勝算はあるんですこと?」
「実は正直、よくわかんないんだ。」
自身の胸中を吐き出して、一般客と思われる人の流れに乗じて二人はセントフェアル女学院の門をくぐる。
「けど、勘なんだけどネヴァは自暴自棄になっているだけ…まずは手を差し述べる。それが今、試すべき可能性だってわたしは思うよ。」
決意を固め、二人はセントフェアル女学院への潜入を開始した。
最初のコメントを投稿しよう!