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ミュステルムの首都、水の都。リュオ達の目的地であるセントフェアル女学院はそこにある。
リュオ達が拠点にしているフレイディア、ミュステルムはそこから東に位置する。
さらにそこから海を渡れば、ルルカの故郷であるヤオロズがある。故にミュステルムとヤオロズの交流は盛んである。
「なんだろう…初めてきたはずなのにどことなく懐かしさを感じる。」
潮風がリュオの銀髪を撫でる。その紅い瞳はヤオロズの定期船が出航する様子を眺めながらポツリと呟いた。
「案外、その妹さんのカラダなのかもしれませんね。カラダは覚えている的な?」
トチカの言うようにネヴァの身体を交換させられてしまっているため、その髪も瞳も何だったらその身体全てが本来のものと違う。
そのせいかガールズラブに生きる彼女…トチカの息遣いが妙に荒いような気がする。背後に立っているから確認はできないがそんな気がしてならないのは気のせいだろうか?
いや、気のせいだろう。彼女はキリス一筋のはずであるとリュオは自分に言い聞かせる。そして、意を決して振り向くと…
そこには凛と立つトチカの姿があった。真紅というよりやや柑橘色に近いトレードマークのツインテール。細身の引き締まった肉体。
どうやらいらぬ心配のようだ。
「トチカさん、ヨダレ垂れてますよ。」
その指摘にトチカは破顔して、利き腕で自分の唇を何度もゴシゴシ拭い去る。その後、何事もなく凛として立つトチカであった。
実はブラフだったのだが、この反応から良からぬことを考えていたのは間違いないだろう。
妹の身体を守るためにも、トチカと二人でいる時は決して気を抜かないことをリュオは人知れず決意するのであった。
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