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「…あの返し技も見事だった。斬った感触がないと言えば良いのかな?
俺の一撃を無効化するだけに留まらずに反撃まで繰り出すなんて…ね。」
リュオが技の講評を終えると爆煙は完全に晴れていた。そして、両手に見慣れぬ漆黒の双剣が携えられている。
鍔も何もない。握り手だけの柄部は全て漆黒。刀身も同様だが、刃紋に当たる溝の部分のも真紅が挿されている。
そして、何よりも形状や質量が先の攻防で見た時とは明らかに違う。視界が悪いというのを考慮しても一目瞭然だ。
「あぁ、これね。攻撃を止めるために形状は変えさせて貰ったよ。
騎士剣から双剣へ…ーセントエルモの緋ver.02ーってとこかな?」
双剣に向けられた視線に気付き、まるでお披露目会といわんばかりに左右対称の双剣を軽く振り回して見せる。
「それだけじゃない…それは精霊力のみを斬ることを目的にした不殺の剣だったんじゃないのか?」
例の硬い感触から今度の剣には実態があるのは間違いない。前に見た時とは別物だと思った方が良いだろう。
「あれは発展途上だったからね。
黒鉄は肉の障壁を斬るため、真紅は従来通りに精霊力を滅するためさ。」
合理的…故に以前のリュオらしくなく、今のリュオに相応しいーセントエルモの緋ーの新たな形態といえるだろう。
「そして、これがver.03だ。」
双剣が頭上で重ねられたと思えば、漆黒に染められた柄部がドロリと溶け落ち、急激に体積を増やし真っ直ぐに伸びる。
漆黒の握り手は異様に長くなり、末端は三叉に割れて真紅が煌めく。それは俗にいう三叉檄…三叉の槍であった。
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