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ヴァリスタン国境付近。鉄製の軽鎧の上からグラスグリーンのローブを纏った数十名の騎士が馬を走らせている。
その進行方向には、騎士達の倍近くにも及ぶ蛮族達がいる。どうやら、彼等は追撃されている最中のようだ。
普通ならすぐに追いつかれるところだが、蛮族達は覆い茂った森林に足を踏み入れることで地の利を得ていた。
そして、蛮族達がある一定の区域に入ると同時に騎士団の動きが目に見えて悪くなっていき最後には静止する。
「くっ…ここから先は国境か。お前ら、一旦止まれ…止まるんだ。」
グラスグリーンのローブ下に白銀の軽鎧を纏った髭の中年騎士が苦虫を噛み潰した表情で指令を下した。
「何を言ってるんですか、このままじゃイタチゴッコじゃないですか!!」
蛮族達は国境を巧みに利用、自分達が不利だと感じるとヴァリスタン領に逃げ込んではやり過ごしていた。
「安心しろ、俺も同じ気持ちだ。ただ、今の人数では心許ないからな。
後方を見てみろ。我が霊峰騎士団からの援軍だ…合流後、短期決戦だ!!」
後方から押し寄せるの同様の特徴・規模を持った小隊が馬を走らせて今にも合流しようと接近して来る。
「あれは第五小隊…昨日から連絡が取れなかったけど無事だっんですね!!」
中年騎士の小隊に所属する若き騎士達の士気が上がる。これで蛮族達と数で並び、懸念要素はなくなったからだ。
むしろ、こちらには魔法がある上に修道騎士と呼ばれる小隊長が二名となった。最早、負ける方が難しいくらいだろう。
「ヴァリスタンの蛮族共め、今に見ていろ…目にもの見せてくれよう!!」
それが中年騎士の最後の言葉だった。不意に首を後方から落とされたのだ。それはあまりに唐突のことであった。
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