252人が本棚に入れています
本棚に追加
「もうすぐ…ギルドの連合軍が王都を蹂躙するだろう。」
天帝宮の頂点から寂しげな表情でミーシェが言う。その服装は神聖騎士団のものとは異なっていた。
そう、例えるなら物語のお姫様が好んで着るような純白のドレス。付随する銀細工も負けじと存在感を主張する。
「この格好か?こう見えても、私にも王家の血が入ってるのでな。」
フフフ…といつもの何ら変わりのない調子でミーシェは笑う。だからこそ、それが強がりだというのが伝わって来る。
「…それとギルドの連合軍、その長が私の首をはねることになるだろう。
もしそうなっても…ラゼルのことを許してあげてくれ。奴にも責任がある。」
一瞬、何を言われているか検討が付かなかった。頭が痛む…でも、同時に二人が置かれている状況が分かって来た。
「さぁ…君は王国とは何の所縁のない人間だ。さっさと、ここを離れなさい。」
てっきり助けてくれと泣き付かれると思った。だが、よくよく考えれば、ミーシェのキャラじゃないだろう。
リュオは小さくあばよと呟くように伝えると背中を向けて歩き出す。大丈夫、ラゼルはそこまで愚かではない。
ミーシェが小さく何かを言った様な気がした。それが何かは良く聞き取れなかったし、聞くに取らない内容だった。
ミーシェ…王国側が目指してるのもラゼル…ギルドの連合と同様に平和だ。だったら、二人はまだ手を取り合える。
大きな力を持ち過ぎた自分が介入してしまえば、両軍に大きな被害が生じ蟠りが未来永劫に両者に残るであろう。
だから、今はこれで良い。なのに、どうしてこんなに心臓の付け根が痛むのだろうか…悲鳴をあげるのだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!