252人が本棚に入れています
本棚に追加
「リュー殿、両軍の衝突は免れないそうです。そうなれば、敗れ去るのは…」
それを語るルルカの顔面は蒼白だ。屍守りの呪いの進行が思ったより早い。このままいけば、彼女は永くないだろう。
「私の呪いは後にして下さい。それよりも明朝には両軍が衝突します。
そうなれば、王国は敗れます。ミーシェ殿の性格ですから、…責任を取られるでしょう。」
そう。例えラゼルが手を汚さなくても、彼女の性格ならばそれを選び…それと引き換えに王国民の命を願うだろう。
「行かれるのですね…流石は私達のリュー殿です。御武運をお祈りします。」
気が付けば、王国の方角に向かって足を踏み出していた。どうやら、自分は誰かに背を押して欲しかったようだ。
だが、すぐに衣服に違和感を感じ…足を止めて振り向く。リュオの服の裾をルルカが掴み上げて引き留めていた。
「あっ…あのコレは私としたことが…」
無意識の行動だったようだ。動揺するルルカの頭をグシャグシャと撫でてやる…もう引き留められはしなかった。
「組み合え、グレイプニル。」
グレイプニルに精霊力を流し、漆黒の両翼を象る。それをこの場で大きくはためかせ、ヤオロズの地を離れゆく。
目標は王都、倒すべき敵は絶対無敵のヴァリスタン軍。不意に頭痛が告げる、倒すべきはギルドの連合軍だと…
もうリュオに迷いはなかった。誰も死なせない…死なせてたまるか。そんな想いと共に王都へと急行するのであった。
最初のコメントを投稿しよう!