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戦場に降り立ったリュオが見たものは、夥しい数の騎士達の死体…何か違和感を感じるものもそれが分からない。
「たった一人に…王国騎士団がやられるなんて…」
足元に伏せていた騎士がリュオを睨み付ける。表情は憎悪に満ちており、それだけ言うと事切れてしまった。
「…遅かったな、既に両軍の勝敗は決した…それでお前はどうする?」
視線の先に立つラゼルの表情は鬼気迫っていた。銀色の甲冑の上に羽織られたトレードマークの白コートが風になびく。
その傍らでは物言わぬミーシェが突っ伏していた。夥しい量の出血によって作られた泉が彼女の死を語っていた。
不思議と怒りの感情は湧かなかった。いや、既に振り切れて…自分はおかしくなってしまっているのかも知れない。
ラゼルの問いに無言で…ただ何も言わずに静かに構える。抜刀はしない…それが正しい在り方である気がする。
「相変わらず…不器用なヤツめ。」
ラゼルの自身の獲物であるポールアクスの様な巨大な槍を振りかざし…それを渾身の力でリュオに対して撃ち込む。
リュオは真っ向からの勝負は捨て、槍の側面から無拍子で蹴りを撃ち込む。均衡が崩れて両者は弾け飛んだ。
「横で見ていた俺には分かる。お前は絶対的な強者なんかではない。
お前は最小の力で、最大の知恵で戦いに臨んできた挙句に今のお前が在る。」
ラゼルがポールアクスを横一文字に薙ぎ払う。凹凸だった大地が一瞬にして滑らかになる…だが、僅かに遅い。
それを塀でも乗り越えるようにして容易に突破するも、その先では雷撃が迸り今にも咆哮をあげようとしていた。
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