~prologue~

3/6
252人が本棚に入れています
本棚に追加
/104ページ
「全軍後退しろ。進退は風の如くだ。」 遂に紅蓮騎士団団長であるリュオ=ナイツフォルド直々に後退命令が出される。 数名の騎士が狼狽えはするものの、命令通りに平地まで後退する。だが、蛮族達もそれを黙って見過しはしなかった。 弓矢や手斧を投げ付けて追撃に掛かる。厄介なのは全て錆びているので破傷風を引き起こす恐れがあることだ。 「ー爆弩(バクド)ー」 錆びた鈍器を中心に風が絡めとり、瞬時に燃え上がってはベクトルを180℃変えては持ち主の元に戻って行く。 当然、蛮族達の統率は乱れる。その混乱に乗じて騎士達の大半が平地までの退避を完了させた。 「さぁ、アレを使うぞ!!  俺の指示通りに退避を終えてない者は全力で逃げ回るんだな。」 同時に湿地帯のあちこちで、ー爆弩(バクド)ーによって引き起こされたと思われる爆発に見舞われる。 その爆破点にあったのは古びた樽。無数に配置されていたものは一つ残らずに破壊され内包物をブチまける。 「事前に仕込んでおいたその琥珀色の液体はある獣魔から抽出した油で揮発性の高い性質を持つ。」 生体爆弾型の獣魔から抽出される油は、比重が軽く発火点が低いため水上でも簡単に着火することが可能だ。 そして、湿地帯の大半はギラギラとした油面で包まれていて火を付ければ蛮族達は一溜まりもないだろう。 「ナイツフォルド団長、流石です。  さぁ、蛮族ども火ダルマになりたくなったから投降するんですね。」 女性騎士が脅すかのようにメラメラと燃え盛る松明を掲げる。事実、それが沼地に落ちれば勝敗は決するだろう。
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!