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「ぬがあぁぁああぁぁッ!!」
ラゼルの咆哮と共にポールアクスが戻って来る。だが、遅い…後はこの疾き鋭き一撃を解放すれば全てが終わる。
そうなれば、ラゼルは死に…指導者を失った世界は再び戦乱の時代に戻り、多くの犠牲者を生み出すことになる。
「ラゼル、お前は俺様が認めた唯一の戦士だったぜ。」
そこまで考えて思考を止め、攻撃に転じる…そんな時だった、首筋の骨を引き抜かれるような感覚に襲われるたのは…
漆黒の靄がリュオの身体を絡めとる。それは闇色の鎖となってリュオを封殺…その動きを完全に止めてしまう。
そんなコンマ一秒にも満たない刹那の世界、土偶のような歪な人形を象る靄が視界の端でニタリと笑うの見た。
次の瞬間、一陣の風が吹く。リュオの長い髪がなびき、全身を絡め取っていた闇色の鎖はいつの間にか消えていた。
「何故…何故、攻撃を止めた?」
ラゼルが悔しそうに呟く中で、リュオの視界には半身を失った自分の姿がある。鋭利すぎる故か痛みは感じられない。
「あんな後追いの一撃などに負ける貴様ではあるまい?」
ラゼルが何か言っているが、今は何よりもあの土偶の存在を…ヤツの名前を…その陰謀を伝えなければならない。
けれども、声を出すことが出来ない。それもそのはず、リュオの肺はバッサリと真っ二つに切り裂かれてしまっている。
「お前は…俺に王になれと?この現実を受け入れ…乗り切れと言うのか?」
ラゼルは心の内を独白で曝け出す。こっちの意図に気付く気配は微塵もない…そう、全ては仕組まれていたのだった。
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