第2話 暁の終焉…繋がれた命

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そもそも、この戦争は勃発に至るまでが早過ぎた。誰かが背後で糸を引いているのは何となく分かっていた。 だが、所詮は有力貴族が自分の私腹を肥やす程度のものとタカを括っていた。だが、それがアイツなら話は別なのだ。 アイツは得体が知れない。力量こそ自分より遥かに下回るも、その人智は一人の人間に収まる域のものではない。 ドサリと何かが目の前に落下する。眼球だけをやっとの思いで動かすと、そこには死したミーシェが横たわっていた。 「彼女の首が取られるまで一緒にいてやれ…お前が死ぬまでは待ってやる。」 その一言を最期にラゼルは背を向けて去っていった。冗談じゃなかった、ここで何としても伝えなければならない。 だが、どうやって?既に眼球すら動かせなくなって来ている。不意にミーシェが最期に言った一言が鮮明に心に響く。 「ミュステルムも…ヴァリスタンも大好きだ。もし、私がいなくなったら代わりに後は任せてもいいか?」 眼球の奥から血液が溢れる。両国の間に挟まれて死を選ぶ女の台詞ではない。そして、彼女をそこまで追い詰めたのが… 先程まで人型の靄が漂った辺りを睨み付けようとするも眼球が反応しない。そもそも、まだそこにいるかも分からない。 目の前の馬鹿だって同じだ。持ち前の正義感を良いよう利用されて、やりたくもない戦争を…殺戮をやらされた。 このままでは終われない。憎悪を錬成して白んでいく意識を繋げようとするも視界は無情にも黒色に反転した。 そして、待っているのは完全な死。絶対的な無の中で魂は削られ…風化して最期には星へと還っていく。
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