第2話 暁の終焉…繋がれた命

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だが、それを拒んだ。憎悪を錬成し続けることで自我を保った。何年、何十年、何百年にも及ぶ孤独を耐え続けた。 その膨大な時間の中でリュオは自問自答を続ける。自分は誰であったのか?自分に何があったのかを考える。 あんな出来事を体験した記憶はない。ならば、未来予知?しかし、自分を含めた仲間達の年齢は変わっていなかった。 いくつかの矛盾を感じる度に頭が酷く痛み思考が止まった。もしかしたら、これは追体験に近い現象なのかもしれない。 では、次に誰の記憶によるもので誰の仕業によるものなのか?これについては考えても答えは出ないので置いておくしかない。 やがて、考えることが尽きる。このまま、星に還る訳にはいかない。その一心から憎悪の錬成を続けるも限界が生じる。 感情が擦り切れて何も感じないのだ。記憶も白んでいき、仲間達の顔すら思い出すことが出来なくなっている。 「そうか…だから、使徒は人間に従ってまで精霊力を求めるんだ。」 その境地に辿り着いた時、天元を覆うほどの眩い光が過ぎ去っていく。その光は一点に収束するとリュオの眼前に落ちる。 まるで巨大な彗星。そう認識すると同時に涙が溢れ落ちた。自分は何千年へも…この時が訪れるのを焦がれていたのだ。 それが常識のように彗星を追う。頭から落ちて闇夜に身を委ねて、遥か遠くに見える彗星を掴むために落下を続ける。 距離は少しずつであるが縮んでいく。彗星と思われる光体の中に少年の姿がある。そして、リュオはその名を知っている。 その少年の名は、リュオ=ナイツフォルド。後に魔王の尖兵となって、王都を崩壊に導いた…自分自身であった。
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