第2話 暁の終焉…繋がれた命

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魔王の全体重を乗せた一撃が立体積層式の召喚術式に直撃する。強固なはずのそれはガラガラと音を立てて自壊する。 これによって、神龍ユルムガルドは服従召喚から解放される。そのはずであったのだが、何やら様子がおかしい。 ドクンと脈打つような鼓動が響く。同時に立体積層式の魔法陣が宿主の内包する精霊力を吸い上げて復元を開始する。 「唯一の勝機を逃したな。服従召喚は使徒の霊魂に術式を接続してあるのだ。」 それが意味するのは酷く悪辣なものだ。召喚術式に囚われた使徒は消滅するまで精霊力を吸い上げ続けられるのだ。 よって、無効化する方法は精霊力を枯渇させて殺すしかない。ただし、精霊力の絶対量から考えて気の遠くなる作業だ。 「まぁ、その程度はやるよな。だが、今ので攻略手順も大分絞れて来たぜ。」 魔王は軽口を叩いているものの、精霊力のブレが激しく安定していない。あれ程の激痛に晒されているのだ無理もない。 「ー究極龍舞(アルテ=ロンド)ー」 好機と見たのか、ユルムガルドの白銀の肢体がうねりを上げながら魔王を押し潰すほどの質量が全方位から迫る。 本来、肢体は一つしかないのだがユルムガルドほどの全長になれば話は別…地平線を経由して幾重にも鞭打が飛ぶ。 魔王はそれを紙一重で避け、ある時は肢体を足場に…盾にしながら何十にも及ぶ鞭打による猛攻を凌ぎ切る。 「…当たらなければ意味がない。服従召喚とやらの欠点が出たな。  服従している以上は命令がなければ動けない…だから、時間差が生じる。」 神龍すらも圧倒的する魔王ではあったが呼吸が荒い。恐らくは、聖獣の力は負荷が強すぎて永く続かないのだろう。
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