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視覚すら灼かれるような照度の中で魔王は両肩から玄武の障壁を発動。腕力にものをいわせて光線を強引に押し上げる。
だが…それすらも一時凌ぎに過ぎない。障壁は圧倒的な熱量の前に溶解する。残されたのは魔王自身の腕のみ。
「ぐっ…出血大サービスだ、両腕くれてやるよ。」
両腕を交差させて、何とか光線を受け止め、凌ごうとするも肉の焼ける嫌な臭いが黒煙と共に辺りに立ち込める。
それは聖獣との融合によって得た再生力と神龍によって放たれた破壊の力が拮抗しているのに他ならない。
だが、その拮抗状態も長くは続かない。魔王の状態が安定していないからだ。両腕からユラリと火炎が立ち昇った。
火炎は瞬く間に魔王の腕から肩に、肩から体へと転移…侵食していく。損傷の酷い箇所は既に炭化すらしている。
パキッという乾いた音と共に炭化した右腕が砕けて地に堕ちる。それを見届けた魔王の眼光はより鋭いものとなる。
刹那、魔王の肉体がひしゃげて光線から弾き飛ばされた。背後にあるミュステルムが光の裁きによって両断される。
誰もがそう思った時だった。光線によって上方から掛けられた力場を利用、魔王は弾き飛ばされながらも反撃に転じる。
「…見えたぜ、勝機ってのがよ!!」
分かりやすく言えば、掛けられた力場を自転によって受け流し、その圧力を上乗せした形で渾身の蹴りを撃ち出す。
それは追体験時にラゼルに放った疾さと鋭さを追求したものと酷似していた。光線は見事に両断され力の放出が終わる。
辛うじて…本当に辛うじてではあるが受け切ったのだ。だが、それが闘いの終わりでないこともまた事実である。
魔王は極彩色の翼を燃え滾らせて、再び推進力を生み出し特攻を掛ける。次が来れば、凌げないと理解しているからだ。
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