第2話 暁の終焉…繋がれた命

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「…ユルムガルド、近付けさせるな。そこの蟻を吹き飛ばしてやれ!!」 急接近する魔王を前に新たな指示が出されるも…悪手であった。ユルムガルドは肺の中の酸素を全て吐き出している。 故に息を継ぐ必要があり、多量の酸素を取り込まなければならない。その動作が魔王の速度を加速…目測を狂わせる。 結果、魔王はユルムガルドの口内から体内に突入。炭化しつつある左腕に宿らせ術式を…最後の手札を切った。 「…憑依召喚ッ!!」 その単語を聞いたケルブの第一印象は安堵であった。何故ならば、憑依召喚は使徒の同意なく成立しない。 仮に服従召喚のようなもので成立させたとしても、ユルムガルド級になれば魂の総量が膨大で上皿が受け止めきれない。 そうなれば、精神は崩壊した挙句に肉体は弾け飛び直視することすら出来ない惨状になるのは安易に予測できる。 それよりも、一番恐れていたのは体内からの直接攻撃である。上顎を突き破られて脳髄を破壊されることだ。 だが、魔王はそれをしなかった。弱くなった故に犠牲の少ない後味の良い勝利にこだわって非情に徹せなかったからだ。 「…勘違いするなよ?  俺が絶乳を憑依するんじゃねぇ…絶乳が俺を憑依するんだよ!!」 聖獣を取り込んだ魔王の肉体が精霊力だけの存在となる。そして、そのまま激突するとユルムガルドに吸収される。 「くっ…精霊力の格が違うわ。  一人の人間がユルムガルドの魂の座に辿り着ける訳がない!!」 ケルブは悟る。魔王の狙いは、ユルムガルドを用いた強化ではない。その霊魂に干渉して意識を乗っ取ることであった。 そして、それは不可能だった。だが、魔王は聖獣を取り込んで精霊力の総量を底上げしている…故に絶対はない。
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