第2話 暁の終焉…繋がれた命

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一方、魔王は精神世界にて精霊力の海を突き進んでいた。目指すは中心部にあるでユルムガルドの魂の座。 だが、あまりの膨大な流れに精神や精霊力が擦り切れていく。いや、酸性の霊薬で溶かされていくといった方が近い。 聖獣の力を取り込んだ外装が泡立ち、次の瞬間には消え去っていく。このままでは魔王自身の魂も時間の問題である。 『深度が馬鹿げてやがる。通常の十倍以上…百はあるとみた方が良いな。』 しかし、まだ半分も来ていなところで玄武の障壁が消失。続いて、青竜の鎧・白虎の毛皮までもが溶け始めていく。 幸いなのは斥力が発生していないこと。それでも、強烈な引力が渦を巻いているので思うように身動きは取れない。 それ故に渦潮に呑まれるような形で流され続けていれば、中央部にある魂の座に辿り着くことは理論上は可能だろう。 もっとも、それまでに精霊力が枯渇してユルムガルドの一部に取り込まれてしまうのが御の字であろう。 だからこそ、魔王は少しでも時間を稼ごうと最短距離を突き進む。聖獣の力が完全に取り込まれてしまう前に… 『後はどうなろうと構わん…朱雀の再生力を最大限に引き上げる。』 半分を過ぎたところで、青竜・白虎の力が完全に奪われる。残されたのは朱雀の力を顕現した極彩色の翼のみ。 しかし、その翼もすぐに崩れ始める。それを再生力で持ち直して…何とか持たせようとするも崩壊は止まらない。 その時、魂の座が視界に入る。それは漆黒の鎖に幾重にも護られた深緑色の群晶体で精霊力の海を生み出していた。 同時に朱雀の力が…極彩色の翼が完全に消滅した。魔王は体制を大きく崩して精霊力の渦に呑まれる。 腕の感覚が消え、足の感覚は既にない。魂が擦り切れて、自分が自分でなくなる喪失感と共に魔王の意識は途絶えた。
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