第2話 暁の終焉…繋がれた命

19/28
前へ
/112ページ
次へ
「用が済んだんなら帰れ。  気の長いお前には召喚の件も蚊に刺された程度にしか思ってないんだろ?」 あろうことか、最強の味方に対して帰還を命じたのだ。そして、それはケルブに取っても願ってもないことであった。 「…相変わらずのようですね。  分かりました。これ以上、生態系が崩れる前に緩々と消えゆきましょう。」 透過率を上げるかのようにユルムの姿が透けていき、それに比例して圧倒的な精霊力までもが消え始める。 今更、手遅れだ…ボケと愚痴りながら帰還を見送る魔王とケルブ。やることは同じであるが胸中はまるで違う。 「人間の秘めたる可能性、確かにこの目で見せて貰った…私の負けだ。」 ユルムの気配が完全に消えたのを見計らって、ケルブは魔王に向かって手を差し伸べると共に自らの負けを認めた。 だが、その胸中は魔王を嘲笑っていた。自分は永遠の命を得ている。貴様が消えた後、確実に世界を手中に納めると… 「あぁ、戦いは終わりだ。」 差し出された手を取り、戦いの終わりを宣言する。そして、警戒を解いたのに合わせて同時にケルブの手を強く引く。 「ここからは復讐の時間だ!!」 限界まで引きつけて放たれた蹴りは最大限の威力で…生命維持が怪しいまでにケルブの顔面を大きく歪ませる。 すぐに再生が始まらなければ、実際にそれで勝負は決まっていただろう。何とか手を払いのけてケルブは距離を取る。 「くっ…下手に出ておれば、調子に乗りおるわ。こうなれば、仕方があるまい…格の違いを見せてやろう。」 服従召喚の陣が虚空に展開されていく。使徒の精霊力を奪い取る術式は、消耗した時にこそ真価を発揮するのだ。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

252人が本棚に入れています
本棚に追加