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「…灼蛇の群れ。刻印の灼傷。日に四度呑め、日に六度の反芻を知れ。」
次々と仰々しい単語が並べられていく。これが詠唱…ー限定魔術(オリジナルスペル)ーだと気付いた時に既に遅し。
魔王の攻撃を立て続けに受けた為、虚空に貼り付けられているケルブには避けることも防ぐことも出来はしない。
だが、それでも自分の最高傑作である再生術式は破れない。これは傲慢でも過信でもない…そう信じるしかないのだ。
「ー反芻焦熱地獄(イグゾデス)ー」
天を焦がすほどの業火の柱がケルブの足元から灼く。全身の皮膚が蒸発するが再生が始まるもそれすらも燃えゆく。
再生と破壊が平等に訪れているのだ。
「その術式…発動している限りは大規模な魔術は使えまい。再生すんのに精霊力を引っ張られるんだからな。」
魔王の拳が腹部を貫く。その際に自らの拳に炎が燃え移るものも厭わない。憎き怨敵を傷付けられるのだから…
「言っておくが…その業火は貴様が死ぬまで消えんぞ。どうしても、消したければお得意の魔法で消してみろ。」
その意図など百も承知である。魔王は再生術式を解除させ、その僅かな隙にトドメの一撃を放とうとしているのだ。
ならば、再生術式を解除しない。これも不可能である。業火によって再生能力が低下してしまっているからだ。
既に部分的にではあるが、修復の終わらない箇所が出ている。このままでは、敗北の未来はそう遠くないであろう。
「熱いか?苦しいか?
下僕共が味わったのと同じ…いや、それ以上の恐怖を貴様にはくれてやる。」
怒涛の勢いで放たれた衝撃があらゆる方角からケルブを揺らす。しかし、そのどれもが致命傷にはなり得なかった。
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