第2話 暁の終焉…繋がれた命

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「なるほど…この程度の痛みで、この私が弱音を吐くと思ったのか。」 全身の至るところから業火が立ち登り、再生と破壊によって終わることない地獄に身を投じて尚…ケルブは言い退ける。 それも当然。このような事態を想定して、ケルブは再生術式の発動中に限って痛覚を遮断するようにしている。 「来るが良い…今から貴様の思惑通りに再生術式を解除してやろう。」 絶体絶命の危機を前にしても、その眼光は少しも衰えない。距離を取るべきの場面で敢えての宿敵を招き入れる。 「思惑だぁ?勝手な解釈で話を進めやがって…まぁいい、付き合ってやるよ。」 気に入らない。そう言わんばかりの表情を浮かべながらの疾走からの急加速…そこに無用な小細工はない。 それに対するは莫大な精霊力を練り上げた大規模な術式。転移の為に蓄えていた精霊力すらも転用している。 その前兆なのか?辺りからは急速に熱が奪われ…消えゆく。その様子に警戒することなく魔王は更に加速していく。 「消えてなくなれ、ー魔帝級氷雪墓標魔法(エンペルレイド)ー」 魔王を回避不可能な位置まで引き付け、産声を上げて生まれ落ちたのはケルブが得意とする絶対零度の氷雪魔法。 規模はロベルトを仕留めた時よりも遥かに大きく、範囲も術者自らをも呑み込んでしまうほどの無差別なのもの。 業火の鎧に身を包んでいるからこそ可能となった荒技だろう。ケルブは攻撃と防御を同時にやってのけたのだ。 冷気を孕んだ大気がうねりをあげ、ケルブを起点に球状に収束…密度を引き上げられたそれは急速に白んでいく。 業火の鎧はたちまち吹き飛び、火傷に塗れたケルブの姿が現れる。だが、ここまでこれば後は容易いものだ。 即座に冷気のベクトルを前方に向けて変更。猪のように馬鹿正直に向かって来る魔王を仕留めに掛かった。
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