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あれから半年、リュオの率いる紅蓮騎士団は蛮族を始めとする盗賊・山賊の集団を殲滅させて数々の戦果を挙げて来た。
民衆は歓喜した。未来の英雄と呼ばれていた少年の成長に…まるで過去のことを無かったかのように手の平を返した。
屈辱であった。だが、リュオは耐え続ける。騎士団の顔となった以上は私情で怒鳴り散らかすなど恥ずべき行為だからだ。
「あの…すいません。リュオ=ナイツフォルド先輩ですよね?」
学園登校時、見知らぬ女生徒から声を掛けられた。赤茶色の毛には見覚えがないが人懐っこい印象を受ける。
最下級生の証である緑のタイをしていることから、彼女の用件は何なのかが聴く前から察しが着いてしまう。
「大ファンなんです、そのダークでクールな瞳に惹かれました。
良ければサイン下さい。それから他の四天聖の皆様のも良ければ是非。」
この半年でリュオの容姿は変わった。冷酷な判断と過酷な任務の積み重ねで表情から優しさが抜け落ちてしまった。
少女の言うようにリュオの瞳は以前よりも細めに映っているようで、ダークやクールなどと安易な単語で飾られる。
あとは最上級生に上がって、青のタイから赤のタイに変わったこと。結っていた髪を下ろしたくらいだろうか?
「俺は構わないけど、みんなは忙しいから何とも言えないかな。」
差し出された化粧ポーチにサッとペン先を走らせて自分の名を刻む。ちなみに四天聖と言うのはーー
「ーー四天聖が一人ッッ、殉愛のクラダ=チャウト推参!!」
摩擦で靴から煙が出そうなほどの速力で滑り込んで来た三年間から変わることのない伝統のオレンジキノコ。
ヒラヒラと揺れるのは最上級生の証である赤のタイ。それを整えながら、クラダはキメ顔で歩み寄って来る。
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