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「あ…すいません。欲しいのは、ラーゼルト様とミシェリア様とルルカ様で…」
そのあまりの唐突な登場に下級生は、後退りながらも上級生相手に失礼にならないように何とか距離を取ろうとする。
「ラーゼルトは四天聖じゃない!!
いいかい、四天聖とは騎士団の中でも天帝様を守る特別な存在なんだぞ?」
そう、クラダは半年前の件で末席ではあるが紅蓮騎士団に名を連ねている。連ねているのではあるが…
「ラーゼルト=リッターは騎士団の人間じゃない。ナイツフォルド団長の周りを徘徊する哀れなハイエナなのさ。」
それはお前だろとツッコミたくなるのを辛うじて耐える。団長となってからのクラダのゴマスリは常軌を逸脱していた。
自分は落ちこぼれていた時から支えた相棒だと豪語。全部、クラダさんのお陰じゃないかと吹き回る顛末である。
ちなみに四天聖との称号を広めたのもクラダである。もっとも、広まったのは少女のいう四人ではあるのだが…
「はぁ…朝は静かに登校したかったんだがな。クラダ、任せていいか?」
これだけの大騒ぎに周囲が無関心のはずがなかった。リュオの姿を見て民衆達がザワザワと騒めき出したのだ。
「はっ、お任せあれ。さぁ、サインが欲しいものは一列に並びたまえ。」
それでも、クラダを咎めないのは利用価値があるからだ。豊富な知識は辞書要らずだし、囮だって自ら申し出てくれる。
その証拠にリュオは手慣れた様子で騒ぎの中心から涼しげな顔で去っていく。
「さぁさぁ、数は十分にあるからね。
半年前に魔族と戦った大英雄のサインをその目に焼き付けるんだね!!」
数分後、差し出されたクラダのサインに不満が出てタコ殴りにされたりされなかっりするまでがいつも通りである。
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