やっぱり彼は、異形だった

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外に買い物に出て感じたのは、ロックさんの明らかな恐怖だった まるで外の世界を初めて見るかのような感じで 人とすれ違うことさえも人一倍勇気を必要としているようなレベル めまぐるしくあたりに視線を走らせ、辛そうに時折表情を歪める そのおかげで外出を断念せざる負えなかった スーパーへの道半ばというところで、私はひきかえすことを提案 最初は渋っていたロックさんが折れるのに時間は要らなかった 正直口では「でも」といいつつ、私の提案を聞いて心底安心していたように思える 家に着いた瞬間のロックさんの肩から力が抜ける様子を見て、それは確信になったんだけども 取り敢えず座って落ち着くために紅茶とまだ残っているマドレーヌを二人で食べる ロックさんは随分穏やかな表情でテレビを眺めていた だけどその顔には疲労の色も伺えるあたり、やっぱり外に出るのは一大決心だったようだ そんなに無理をしてまで付いてきて欲しくはない だけどいまのロックさんはそんな無理しないといけないぐらい、不安にも襲われている 確かに私もある日耳が聞こえなくなったら? 今まで聞こえていたものが聞こえなくなったら、不安でしかない まぁ私たちには病院というものがあって、まだそこに頼れるという安心感もある だけどロックさんには、それすらない 頼る宛もない ここまで過敏になるのも仕方ない だけど、なぁ 一生部屋から出ずに暮らすなんてまず無理だ 今日は幸い私はバイトもないし出かける用事もないのでいいけど 明日にはまたバイトだし、何より大学だって始まる ロックさんを連れて大学にはいけないし...バイトだってそうだし... 明日にでも私は一人で外に出なければいけない ロックさんだって、一人で外に出られなければ生活に支障が出る なんだかなぁ 私たちがであった当初に戻った気分だ、ちょっと あの時とはまぁいろいろ状況が違うけど 外に出る出ないで悩むのは、あれ以来だ
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