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「いいんですか?」
いいんですか、ってそれ私も思ってました奇遇ですね的な発言じゃん
にやけそうだからやめてにやけないで私ロックさんすごく不安そうなんだから
「もちろん、そっち行ってもいい?」
「はい」
嬉しそうに笑う彼の顔を見て心臓が高鳴る
ロックさんが笑ったの、今日初めて見たかもしれない
もう今日が終わろうとしてるこのタイミングで、やっと...
それだけロックさん、余裕ないのかやっぱり
ロックさんの横に潜り込み、彼の方を向こうとすればそれより先に、後ろから抱きしめられるように引き寄せられた
一気に距離はなくなり、背後にロックさんの体温を感じる
彼は私の首元に顔をうずめ、静かに呼吸している
吐息が少し首にかかるせいでくすぐったい
思わず身じろぎすればするほど、ロックさんは離さないとでもいうように私をだく力を強めていく
「ロックさん?」
返事はない
前みたいにこれぐらいで心臓が止まりそうになることもない
いつかみたいに思考停止にもなりかけない
あー嘘、前言撤回
やっぱりこの状態は心臓に悪くない
ドキドキしてしまう
頭はどんどん冴えてくるし、今ものすごく変な顔してる自覚が
「冬」
「ん、うん?」
低くて小さな声
小さすぎて時折掠れるその音は、聞いていて本当に心地がいい
「あなたはいつも、私が触れるとこうなるんですか」
「え?こう、ってえ?どんな?」
ものすごく体が熱くなってるとか?
硬直してるとか?
息今にも止まりそうとかそういうこと?!
あぁそうだよいつも多分こんな感じですよ余裕ぶってごめんなさい!!
「ああ、ええと」
クスリと彼は笑う
楽しそうに
「小鳥みたいに、心臓が早く動くことです」
ああああそういうことかああああ
一気に顔が熱くなった
指摘されてたいして恥ずかしくもないはずなのに、滅茶苦茶恥ずかしい言われてしまうと
「そ、うだね、うん、やっぱり慣れないというか、うん」
ロックさんはまた小さく笑って、大きく深呼吸した
次に聞こえてきた声は、妙な憂いを帯びていて
まるで何かしらの後悔が含まれている気がした
「心が読めたときは、あまりわかりませんでした」
「聞こえていたはずなのに...この音も」
「...私は思った以上に」
「力に、依存していたようです」
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