やっぱり彼は、異形だった

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力に依存、か まるで自分を責めるような声と言葉に、私はなぜか反抗心のようなものを抱いた だから思わず口を開いてしまった 「でもさ、心を読めるのがロックさんからすれば普通でしょ?」 「え?まぁ、はい」 「だったら依存とかじゃないと思うんだ私。どっちかって言ったら、今まで聞こえてたものが聞こえなくなった、当たり前だったことができなくなってるのが現状じゃん。だからなんていうかこう、依存じゃないと思うからその...あーえっと」 うまい言葉が見つからない だけどまるで自分を責めなくてもいいし 情けないなんて思わなくてもいいと思う 「ロックさんが今不安になったり心配になったり心細くなるのは、仕方ないと思うんだ」 ロックさんは何も言ってはくれない 半ば勢いで言ってしまった反面失言をした気がして妙な焦りが出てきた 「あーえっとその...ごめん偉そうに、私、ロックさんが今どんな気持ちか理解できてないのに...」 他人の気持ちも、自分の気持ちでさえも理解しきることなどできない 異形の彼の気持ちは、もっと分からない 「いいえ、ありがとうございます」 ロックさんはゆっくり後ろから私の右手を握り締めた 大きくて、綺麗で、温かい手だ ロックさんのこの手に触れられるのが、私は本当に好き 「冬さんにそう言ってもらえると、気が楽です。気にしなくていいんだと」 あぁよかった とんちんかんなことは言ってなかったみたいだ 「ロックさん、もし私の言動でロックさんの不安が軽くなるなら出来る範囲内で善処するから言って欲しい、だからその、色々言葉にして欲しいならいつもより気をつけるし」 「あぁそれは、はい、是非」 まぁ、そうだよね いつもはロックさんが気持ち読めるのにすっかり甘えて言葉に出すの疎かにしてる自覚ある 気持ちはちゃんと言葉で伝えていかないと 前にそれで失敗してるんだし...ははっ 「わかった、あと私に出来ること、ある?」 取り敢えず今聞けることは聞いて明日からやっていこう そうじゃないと 今のロックさんは、消えてなくなってしまいそうなほど不安定だ
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