其の二『瑠璃丸』

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「あのう・・・・・・」 小さく遠慮がちな声の主が、戸口から顔を半分出して覗いている。 「『招き堂』の福之助さんという方は、こちらに・・・・・・?」 「はい、それは僕の名前ですよ」 「あなたが福之助さん・・・・・・!やあ、本当だ。噂通り、ぼくの言っていることが伝わるなんて驚いた」 「初めは皆さんそう言います」 「実はその、折り入って相談したいことがありまして」 「なるほど。まあ、立ち話もなんですから遠慮せずにどうぞどうぞ」 縁側へと通されたその客は緊張した面持ちで、茶の用意をする福之助をじっと見ていた。 時折溜息を吐いているさまは、いかにも悩みを抱えた雰囲気をかもしだしてやがる。 「さあさ、召し上がってくださいね。頂き物ですが、金平糖と桜茶です」 「あ、ありがとうございます。これはこれは・・・・・・素敵なものを」 様々に彩られた砂糖菓子。 ひと粒口に放り込み、カリカリ歯ごたえを楽しむと、舌の上でじんわり広がる甘い味。 湯飲みに浮かぶ、ふわりと花開く桜を愛でながら、ほどよい塩気に舌鼓。 ほんわり暖けぇ春を満喫しちまった。 どうやらそれは、客も同じ様子。 さっきまでの緊張がほぐれて、笑ってやがる。 「申し遅れました。ぼくは瑠璃丸。老夫婦の元で暮らしています。先月この町に移り住み、福之助さんの噂を聞いたのです」
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