其の二『瑠璃丸』

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灰色で艶のある滑らかな毛並。 若いその猫は丁寧に語り始めた。 「そうでしたか。それで、瑠璃丸さん。相談があるとおっしゃってましたねえ」 「はい。もうずいぶんと前から・・・・・・それこそ物心ついた時からの悩みなのです」 瑠璃丸は縁側の木目に視線を落とした。 「・・・・・・水が怖いのです。怖くて怖くて仕方ないのです」 「水が。・・・・・・ふうむ。猫はたいがい水が苦手なものではないですか?」 俺も怖ぇってほどじゃあねぇが、苦手かもな。 毛が濡れるのがどうにも気に入らねぇし、何より乾くまで感覚が働かなくなるのが困りものだが。 「それがそのう、お恥ずかしい話なのですが・・・・・・その比ではないのです!!」 絞り出すような声で訴える瑠璃丸。 その顔は真剣そのものだ。 「ーーというと?」 「水を張った桶に入れられたり、シャワーをかけられた途端・・・・・・!もう自分ではどうすることも出来ないほど取り乱してしまって。我を忘れてバシャバシャと暴れ、叫び、転がるようにそこら中を駆けずり回って・・・・・・。それだけでも主人にとっては大変な惨事だというのに・・・・・・」 言葉を切った瑠璃丸の表情が一層曇った。 「ぼくは・・・・・・無意識とはいえ、主人を・・・・・・母さんを傷つけてしまったのです」
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