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「さあて。ではさっそく、風呂の準備でもしましょうかね」
「・・・・・!!」
ごくり・・・・・と、瑠璃丸の生唾を飲む音が聞こえてきやがる。
「まあまあ、そう緊張しなさんな。日本には色々な風呂の楽しみ方があるもんです」
「風呂を・・・・・楽しむ」
「ええ、そうです」
「少し準備が必要ですから、ごろ寝でもして待っていてくださいよ。・・・・・ええと、桶に手拭い・・・・・ああ、薬缶の湯は余っていたかな・・・・・ーー」
なにやら、ぶつぶつと独りごちながら奥へ姿を消す福之助。
瑠璃丸は不安そうな面持ちでそれを見送ると、深い溜息を吐いた。
「・・・・・母さん。ぼくは」
低く呟くと、また決心したように柔らけぇ拳をぎゅっと握りしめている。
だが少しするとまた溜息を吐き・・・・・を繰り返し・・・・・。
苦しそうだな、瑠璃丸よ。
福之助、何とか上手いことこいつの悩みを解決してやってくれ。
そう願っていると「どうも、お待たせしました」と、奥から福之助が戻ってきた。
びくりと肩を震わせた瑠璃丸だったが、福之助が持ってきた物を見て目を丸くしてやがる。
「福之助さん、桶と手拭いはわかりますが・・・・・そっちの、それはどういう・・・・・」
「ああ、これ。柚子ですよ」
「柚子・・・・・ですか?」
「ええ。いきなり湯を被るんじゃ敷居が高いと思いましてね。柚子を浮かべた足湯から慣らしていきましょう」
柚子湯とは、また面白ぇ。
どんなもんだ?
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