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「ほら、こうやって湯に柚を浮かべると・・・・・」
「やあ!これは素敵な・・・・・なんていい香りなんだろう!」
いやはや、まったく人間は面白いことを考えるもんだ。
何のへんてつもねぇ白い湯気から、柚の甘酸っぱい香りがほわんと広がってきやがる。
お日さんの光を浴びる果物畑で贅沢に昼寝してる気分だな。
ぷかぷか漂う柚に飛びかかりそうになるのをぐっとこらえて、存分に息を吸い込む。
「さあ、いい湯加減ですよ」
福之助は縁側から庭に降りる石段の上に桶を置いた。
縁側に座るとちょうど足湯にいい高さだ。
「瑠璃丸さん。足を入れてみましょうか」
「あ、足を・・・・・。やってみます」
「ゆっくり、焦らずに・・・・・ですよ?」
こくりと頷き、恐る恐る片足を桶の上まで差し出す。
湯気に包まれた足をプルプルと震わせながらも、少しずつ水面へ近づき・・・・・
肉球が、ぽちゃんと湯に触れた瞬間・・・・・ーー
「フッ・・・・・!フギャァァアアアア!!」
バシャン!と盛大に水しぶきを上げ、猫のものとは思えねぇ速さで身をひるがえす。
部屋の隅へと一目散に逃げていく瑠璃丸。
その叫び声と動きには、さすがの俺も腰を抜かすかと思ったぜ。
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