其の二『瑠璃丸』

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「ほら、こうやって湯に柚を浮かべると・・・・・」 「やあ!これは素敵な・・・・・なんていい香りなんだろう!」 いやはや、まったく人間は面白いことを考えるもんだ。 何のへんてつもねぇ白い湯気から、柚の甘酸っぱい香りがほわんと広がってきやがる。 お日さんの光を浴びる果物畑で贅沢に昼寝してる気分だな。 ぷかぷか漂う柚に飛びかかりそうになるのをぐっとこらえて、存分に息を吸い込む。 「さあ、いい湯加減ですよ」 福之助は縁側から庭に降りる石段の上に桶を置いた。 縁側に座るとちょうど足湯にいい高さだ。 「瑠璃丸さん。足を入れてみましょうか」 「あ、足を・・・・・。やってみます」 「ゆっくり、焦らずに・・・・・ですよ?」 こくりと頷き、恐る恐る片足を桶の上まで差し出す。 湯気に包まれた足をプルプルと震わせながらも、少しずつ水面へ近づき・・・・・ 肉球が、ぽちゃんと湯に触れた瞬間・・・・・ーー 「フッ・・・・・!フギャァァアアアア!!」 バシャン!と盛大に水しぶきを上げ、猫のものとは思えねぇ速さで身をひるがえす。 部屋の隅へと一目散に逃げていく瑠璃丸。 その叫び声と動きには、さすがの俺も腰を抜かすかと思ったぜ。
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