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一課の刑事が榊に訊いている。
「被害者が織部の上に屈み込んだところを一突きですか?
やはり凶器は絨毯の上に落ちていた錐ですか?」
「そうだな。
背後から心臓を一突き。
迷いがないな」
榊は険のある目許を傷口に向けて言った。
「犯人は結構上背があるようだ。
この刺入口の感じからすると―― 二ノ宮漱子」
ふいに呼びかけられ、隅に立っていた漱子を本庁と所轄の刑事たちが振り返る。
「お前何センチだ」
「ええっと、百七十……一、かな?」
と首を傾げると、
「……サバ読んでないか?」
と眉をひそめられる。
「そんなもん読むくらいなら、こんなヒール履かないしー」
と漱子は高い靴の踵を見せたが、そうか、と言って、榊は笑いもせずに、漱子を被害者の後ろに立たせた。
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