冬の日の殺人

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「その位置から振り下ろして。そう、直前で止めて― やはり、この傷口の形状から行くと、このくらいの角度だろう。犯人は百八十センチ前後」  慌てて刑事たちがメモ帳に書き込む。榊は、ちらと漱子のヒールを見て付け加えた。 「――女でなければ」 と。  漱子が下がると同時に、刑事が言った。 「織部以外にも並べられていたのかもしれませんね。なんだか机の上がやけに片付いてるし」  机の後ろの書棚は半分飾り棚になっていた。  その空いている部分に、無造作に本やペン立て、小物などが積み重ねられている。  おそらく、机の上にあったものを寄せたのだろう。 「遺体の下になってた奴はさすがに気が引けて置いてったのかな。てことは、物取りかな」  本庁の刑事が開けっ放しの隣の小部屋を見ながら言った。
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