冬の日の殺人

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 あちらの金庫が開けられている。その中に保管されていたものを、並べていたのかもしれない。  同じく本庁の田沼が言った。 「警備会社の警報器も鳴ってませんし、わざわざ自分で金庫から出してきて並べたのだとしたら、顔見知りか、よほどの上客かもしれませんね。  これ、店にも出さずに保管していた代物みたいですし。加東の個人的なコレクションなんじゃないでしょうか」  今、織部が載っているか店の帳簿を確認しています、と付け加えた。  榊は刑事たちの遣り取りを耳の端に聞きながら、遺体の検分を続けている。 「犯行時刻は昨夜の九時から十二時の間。硬直は足まで来てるが、昨日は冷えたしな」  加東は現在、家族とは別居中のため、発見したのは、朝通ってきた家政婦だったらしい。 「ちょっ、ちょっと待ってくださいってばっ」  ふいに下に居るはずの警官たちの声がした。
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