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「一応、解剖に回しましょうか。
手続きをしても?」
という榊の声を聞きながら、漱子は早々にその場を後にした。
道に止めた車の側でおとなしく待っていた斉上を笑うと、なんだよ? と威嚇される。
「いやいや、一緒に話聞きに乗り込んでくるかと思った」
「そうしたいのは、山々だったんだがな。
ほら。あそこで睨んでるジジイ。
前、一悶着やっちゃって」
榊の向こうから、今もこっちを睨んでいる老刑事を指さして、斉上は言う。
「ほんっとうに何処でも騒ぎを起こす人ね」
「俺たちには管轄がねえからな。
まっすぐ署に帰ったんでいいのか」
うん、と頷く。
ドアを開けながら漱子は言った。
「当たり前だけどさ。
車の横に、斉上興信所とか書いてないのね」
あほう、と斉上はエンジンを廻す。
「お前、ときどき切れるんだか、馬鹿なんだか、わかんねえこと言うんだよな」
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