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「森本は、志望校はどこだった?」
担任の田中がファイルを眺めながら尋ねてくる。
「南高校ですよ~。」
森本舞香(もりもとまいか)は、ためらいもなく答えた。
「もうちょっと努力が必要だなぁ。」
「はい、はい。」
「はい、はいって今の状況分かってるのか?」
「分かってますよ~。偏差値10足りないんでしょ?」
「そんな軽い言い方するけど、偏差値10ってかなり努力しなければ…。」
「先生!」
舞香が田中の話を遮って質問してきた。
「何だ?」
「先生って彼女いるの?」
「お前なぁ、今関係ないだろ。」
「だってぇ~、進学の話ばかりじゃつまらないんだもん。」
少し膨れて見せる。
「進路相談なんだから、進学の話をするのは当たり前だろうが。」
「まぁ、先生。私の進学は何とかなるって!」
「やれやれ。」
どこまでも楽観的な舞香についに田中も呆れ果てた。
眺めていたファイルを閉じて無造作に軽く放り投げる。
「なぁ、森本。」
「何ですか~?」
「将来の夢って何だ?」
「急にどうしたんですか?」
「お前の言う通り、進学の話ばかりじゃつまらないかも、って思ったから、夢を聞いてみたんだよ。」
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