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「なあ、明日は浩介の誕生日じゃん。晩飯、何がいい?」
俺は昨日作ったカレーを皿に盛ったライスの上にかけながら、横目で浩介の様子を窺った。
「ああ・・・誕生日か」
浩介は顔を上げて俺を見た。
「兄ちゃん、カレーと焼き肉の他、何作れるの?」
「はあっ?何でも作ってやるって」
俺はそう言いながら、キッチンには母さんの料理の本が沢山あったから、何とかなるだろうと考えていた。
「オムライスがいい。ケチャップでおめでとうって書いてくれたら、ケーキの代わりになるじゃん」
「バカ言え、誕生日はケーキだろうが。兄ちゃんがちゃんと」
「えっ!?兄ちゃん、ケーキなんて作れるの?」
パッと浩介の顔が輝いた。
俺は「ちゃんとケーキ屋に注文してきたぞ」と言うつもりだったけど、思わずその言葉を飲み込んだ。
浩介が久しぶりに本当に嬉しそうな笑顔を見せたからだ。
「誕生日ってさ、家に帰ったらケーキを焼いた匂いが家の中に広がっていて・・・それで、ああ、今日は僕の誕生日なんだって実感するんだ」
「そ・・・そうか。そう言えば、俺もそうだったな」
やっぱりケーキは作ってみるか。
そう思った時、母さんの笑顔が脳裏に浮かんだ。「無理しなくていいんだよ」
いや、母さん。時には無理をしてでもやるべきことだってあるんだよ。
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