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肌寒い夜の平原を駆けて行く。
トウマの指示によって使命を持ち、それぞれが動き出していた。
レナ達は城下町の宿屋に着くと、先ずは冷えた体を温める。すると、疲れ切っていたミクは、めうと一緒にすぐ寝てしまった。
しかし、眠れないレナはベッドに座り、窓の外に映る月を眺めていた。
「眠れないの? これでも飲みなよ」
「有難う御座います。サクラちゃんの事を考えると、眠れなくて……」
「……」
クミは温かい飲み物を手渡し、レナの横へと腰を下ろす。窓の外を見つめる姿は、差し込む月明かりでキラキラと輝いて見えた。
そんなクミを見て感じた事を、レナはそのまま口にする。
「どうしてクミさんは、トウマさんと一緒にいるのですか?」
「えっ!? いや、私はちょっと理由があって……べっ、別にトウマ君とは何もないよ!」
焦りながら両手を横に振る仕草が可愛くて、思わず少しだけ笑ってしまった。
「ふふっ……そういう意味では無いですよ。なんで兵士さんをやっているのかなって。クミさんみたいに綺麗な人を、兵士さんで見た事が無かったから……」
「おっ、レナちゃんは口が上手いね。私が男だったら惚れてたよ」
笑顔で返すクミだったが、暫くすると少し寂しそうに目を細める。
「私はね……小さい頃に戦で親友を亡くしているの。とても良い子だった。争いが嫌いで、誰よりも平和を望んでいる子だったんだ。なんでこの子が死なないといけないのって、ずっとお母さんに言ってたな……」
月の光に照らされた儚い瞳は、金色となって窓の外へ向けられた。
「どうしても納得が出来なくて、私が王様になって争いの無い国を作ろうと思った。でも、幼かった私は成長して、王様になれないって気付いたんだ。それならせめて、平和な国を作る手助けをしようと思って兵士になったの」
「そんな事が……」
ここにも争いの傷跡があると、レナは切ない思いで胸が締め付けられる。
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