戦う理由

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「客将って分かる? 期限付きで一時的に配下になる兵士なんだけど、私は客将で幾つもの国を渡り歩いたんだ。でも、争いが無い平和な国を作ろうなんて王様には会えなかったの。そんな時に、東国でトウマ君に出会ったんだ。衝撃的だった……こんなに頭の良い人が、世の中にはいるんだなって」  同じく十年前に、トウマとの衝撃的な出会いをしたレナは共感して頷いた。 「だから、トウマ君に争いの無い平和な世の中を作ってよって言ったの。何て答えたと思う? 俺は上に立つ者ではない。クミの言う理想の世界を望むなら、争いを好まない優しい王様を探すんだな……なんて言うの。そんな人が何処にいるのか聞いたら、心の国王を見に行こうって誘われたんだ。それで、裏切り者を探しに行く旅へと同行する事にしたの」 「トウマさんは、心国に裏切り者がいるって知っていたのですか?」 「それは無いと思う。サムが城に居るって知った時、驚いた顔をしていたからね。トウマ君は優しいから、私の事を考えて心国から探そうとしてくれたんだよ。でも、大当たりだったね。あははっ」  無邪気に笑うクミを見て、優しさに包まれる感覚が体を駆け巡る。それは懐かしく、大切な想い。 「つまり、サクラちゃんと私の夢は一緒。だから私も頑張るよ。ん? どうしたの?」 「分かった……クミさんは、サクラちゃんに似てるの。だからこんなに落ち着くんだ」 「私がサクラちゃんに? そっか……あんな可愛い子に似てるなら嬉しいな」  キョトンとした表情を見せると、体を寄せて微笑む。  レナも寂しくなり、クミに体を預けた。 「クミさん……サクラちゃんは……」  やがて寝息を立てるレナを、そっとベッドへ寝かしつける。  優しく手を握り、そのままクミも眠りについた。
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