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「まさか、あんな雨の日に公園の崖から足を滑らせるなんて、不幸な話よね」
由紀の母親の声は、すぐに空気に溶け込んでしまうくらいの、悲しげで弱々しい声だった。
「確かな不幸な話ですよね」
不幸というよりは、変な話だ。あんな雨の日にわざわざ山にある公園まで行くなんて。謙也が気になるのもこの事だろう。
「それにしても、由紀も馬鹿よね。あの雨の日にあんな所に行くなんて」
由紀の母親は優の方を微笑んだ。その目には涙が溜まって、太陽の光を浴びて、きらびやかに輝いている。
「馬鹿じゃないですよ。何か予定があったのでしょう」
優は優しい声で言った。
僕の言う通りだと思う。何もなしにあの日にあんな所へと行くはずがない。
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