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堪え、溜めていた涙が彼女から零れ落ちた。それを見てるのは嫌だった。いや、それを見て何もかける言葉が見つからない自分が嫌だった。
「ごめんなさいね、こんな姿見せてしまって。そろそろ帰るわ、さようなら」
彼女は泣きながらも笑顔を作り、優に向けた。
「いえ……さようなら」
優は彼女にギリギリ聞こえるくらいの大きさの声で言って、彼女の去る姿が見えなくなるまで弱った背中を見つめていた。
僕の背中も、あんな風に弱って見えてるのだろうか。いや、僕はちゃんと受け入れてる…。
「大丈夫なはずだ」
優は誰もいない墓場で、独り言を呟き、「水沢由紀」と彫られた墓を見つめてから、歩きだした。
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