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謙也は買う物が書かれたメモを見ながら、食品を手に取っていく。急にその手がピタッと止まり、一点を見つめ、先日の朝の優との会話を思い出していた。
ーー変だとは思わないか?
ーー別に。
本当に優は何も変だとは思ってないのか?いや、優にとってそんなはずはない。あいつは多分、知ることを拒んでいる。
謙也はメモにあるものを全部買って、店を出た。少し歩くと、正面に1人の女性が歩いている。見覚えのある後ろ姿だ。
謙也は足早に近づき、尋ねる。
「水沢さん?」
女性は振り向くと、涙を流している。やはり由紀の母親だ。
「どうしたんですか?」
彼女はすぐに涙を拭って答えた。
「謙也君じゃない。今日、由紀の命日だからお墓参りにね」
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