あの日の出来事

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 優は溜息をつく謙也を遠目で見る。そしてすぐに自分の手元の教科書へと向き直る。  謙也は小学生の時からの友達だ。この言い方は僕自身好きではないが、いわば親友というやつだろう。特に何もない、友達もいない僕のそばにいつもいてくれる、優しくて最も信頼している奴だ。だからこそ、謙也には僕の心配をしてほしくない。  シャーペンを持つ優の手はいつの間にか止まっており、窓の外をボンヤリと眺める。 「北野、どこ見てんだー」  先生に名指しで指摘され、優はハッとする。 「すみません」 と頭を下げ、再び手を動かす。  今はこの事を考えるのをやめて、授業に集中しよう。  謙也の方にチラッと視線を向ける。謙也は1時限目から寝始めた。 「あれは注意しないのか」  優はボソッと呟く。
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