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それから月日が流れ…… 俺は遅まきながら一念発起し、新しい仕事を始めていた。 身分はアルバイトであるが、前よりも待遇はよく、稼ぎもまずまずで、俺は満足している。 プロの作家を目指して執筆する日課も相変わらずだ。 先は長いだろうが、あきらめて放り投げるつもりはない。 いつになるかはわからないが、必ず叶えて見せる。 何の保証もない目標であるけど、上出来じゃないか? 前に比べたらプラス思考の生き方を実践できているわけだし。 ただおふくろは……収監されていた刑務所内で病を患い、帰らぬ人となった。 その顔に浮かぶ表情は、久しく忘れていた、穏やかなモノであった…… 俺は名実ともに、天涯孤独の身となった。 ろくに親孝行らしい事もせず、ひねくれた接し方しかしなかったのが、今となっては悔やまれる。 1人きりになって考えさせられる。 俺は何が気に食わなくて、親子間に壁を作ってしまったのか…… これから先の人生で、俺にも結婚の機会が訪れるのだろうか。 そうして子供ができて、家庭を築いて暮らす……まるで実感がわかず、途方に思える未来であるが、可能性がないわけではない。 だが、どうしても二の足を踏む自分しか想像がつかない。 人並に家庭を築く自信はなく、何がきっかけで家庭に亀裂が入るかの不安を拭いきれない。 みんな考えないのだろうか。 家族にトラブルが起きる可能性を、幸せと不幸は表裏一体、いつ裏返ってもおかしくない不安定で成り立っているのに。 人間が築き上げるモノなんて、簡単に壊れるのに。 それを承知で、全てを受け入れて、家族を作っていくというのか…… 俺みたいな人間にも、そんな強さがあるのか。 今は想像さえ及ばないが、永く忘れていた一歩を踏み出す強さ。 それを繰り返してゆく事で、いつしか俺にも…… まずは、生きてみよう。 自分の思うように、第二の人生を。 転がり落ち続けた人生から、登りゆく人生へ。 どうなるかなんてさっぱりだが、何とかなってしまうものだろう。 見ていろよ、もう下を向いてでなく、前を向いて歩いていってやる。 足どり軽く、俺は歩き出す。 何者にもなれる、何でも叶えられる未来を目指して………… 完
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