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30代も後半になった身でありながら、俺はくすぶり続ける人生を送る身。 時給に換算して875円の仕事をバカみたいに十数年、肩書きのないアルバイト。 当然、結婚などとは縁もなく、実家に暮らしている。 今まではそれでどうにかなっていた。 収入は少ないが、それなりに生活が成り立ってしまう、どこかお気楽身分でよかった軟弱な生き方で、まあ、平気だった。 今から思えば、これがいけなかったかもしれない。 低収入でどうにかなってしまった、そこに落とし穴があった事に、後々大きく気づかされるのだ。 実家には俺の両親が共に暮らしている。 親父は高齢で80を越え、おふくろは65。 俺が中学卒業と同時期に会社を退職した時、いかに親父が高齢であるかを思い知らされた。 同年代の連中の親父なら、まだ働き盛りであるだろうにと。 そんな親父と距離を置くようになるのに、長い時間は要さなかった。 おふくろは色々なパート仕事をしている身で、一見、人当たりはよさげだが、実際は少々怒りっぽい性格。 小さい頃には祖父母も一緒に暮らしていたのだが、反りが合わないというのか、口喧嘩ばかりしていた記憶。 その祖父の死を迎え、葬儀から間もないおふくろの一言。 「死んだって聞いて嬉しかったよ」 俺が聞いていないと思って出た本音を、しっかりと俺は聞いていた。 祖母も亡くなり、3人での暮らしが長く始まる。 高校卒業後、俺は近場の工場で働き始める。 そこを就職先に選んだ理由だが、何だったのだろう。 近い、というのはあったかも。 とにかく、行き帰りがスムーズな場所が好ましいと、当時は考えていた節がある。 が、明確な理由となると……これがはっきりしないのだから、自分で呆れる。 そんな程度で選んだ仕事であるから長続きせず、およそ1年で×。 それから仕事探しを始めるもこんな時代、なかなか見つかる筈もなく、しばらく無職の身。 余った時間を利用して、免許を取得。 そして選んだ再就職先もこれまた近場なのだから、ますます呆れる。 採用条件は前よりも悪く、残業手当もなし。 これはすぐに辞めてしまうだろうと思いながら始めた仕事であったが、気がつけば人生の半分近くを占めるまでになっていた。 これには自分が驚かされた。 何がよくて俺は低収入の仕事を続けているのか。
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