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「クニヒロ、ありがとう」と、リビングに行くと、テレビを観ながら「おう」と言った。
「ドライヤーある?」
「ドライヤー?ああ。ここ」と、使ったのかテーブルの上に置いてあった。
「借りるね」
クニヒロの隣に座って、スイッチをONにした。熱風が髪をなびかせた。
ふっとクニヒロがあたしを見つめていることに気がついた。
「なに?」とスイッチをOFFにして、クニヒロを見ると急に半乾きの毛先に指を絡ませた。
「クニヒロ?」
「お前さ……」
そう言って、指を離した。
「髪の毛、伸びたな」
「悪い?」
「悪くないけど、邪魔じゃねーの?」
「邪魔じゃない」
「中途半端な長さ」
「変って言いたいの?」
「んなこと言ってねーよ」
「クニヒロの彼女だって、このくらいの髪の長さじゃない」と言うと、「彼女?いねーよ」と言った。
「はっ?」
「は?じゃない。誰がそんなこと言ってたんだ?」
「マネージャーの子は?」
だって、この前見たばかりだ。二人がキスしたところを。
「マネージャー?ああ。別れたよ」
「別れたんだ」
「受験だし。面倒臭くなって。デートとか電話とか」
そういうクニヒロは悪びる様子もなくただ、かったるそうだった。
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