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そう言って、携帯を開いた。
あたしのアドレス帳には、高校生のときのクニヒロの番号がそのまま登録されている。
使っていないアドレスを何件か消去したのに、新しい携帯にしたのに、それは結局、消せないままでいた。
赤外線で送ると「きたきた」と、クニヒロは言う。
「うん」
「今度、飯でも食いに行くか?」
「飯?」
「久しぶりだから。どうだ?」
「いいけど」
じゃあ、またなと言った。きっと、社交辞令だ。そう思った。なら、ご飯を食べに行くこともないだろう。
だって、あたしから、誘うことなんかない。
昔から、そうだ。
クニヒロが誘ってくれないと、あたしは、クニヒロに声なんかかけれない。
まだ、そんなあたしのままだった。
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