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ひとり暮らしというけど、あまり生活感の感じられない部屋だった。
良く言えばシンプル。悪く言えば殺風景。
辛うじて、テレビの横に置いてある観葉植物の植木が、部屋を明るく見せてた。
「なにもないね」
「寝るためだけに帰ってるだけだからな」
ビールでいい?と訊いて、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。
「こんなつまんなそうな部屋、人呼べなくない?」
「失礼な奴」と、笑って、あたしの隣に腰を落とした。
「だって、そうじゃん」
「呼ばないよ」
「彼女は?」
「まあ彼女は別」
「他の女は?」
「呼ばないな。家とか、急に来られるの嫌だし」
そういうタイプばかりと遊んでいるのか。 どちらかというと、積極的な。
「クニヒロ、未だに、誰にも本気になったことないでしょ?」
「なにそれ」
「言ってたじゃん。誰も好きになったことないって」
「そんなこと言ったか?」
「言った」
「いつ?」
「高校のとき」
「言った憶えない。よく憶えてるな」と、笑った。
部屋を見渡せど、女の子の荷物とか、忘れ物とか、連想させるものもなかった。
だからか、冷えたビールが美味しく感じた。
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