3.

8/14
146人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「え?」と、クニヒロとドクロの指輪を何度も交互に見た。 「お前、憶えてる?」 「なに?」 「高校のバレンタイン」 確か、俺が高三のときかな。受験のときだったから。と、続けて言った。 「あ……」 「あんとき、お守りとチョコくれただろ」 「あげたっけ」 「もらったって。家のポストにいれてくれてただろ?」 「あたしじゃないよ」 咄嗟に嘘をついてしまったのは、無記名でいれたはずだったからだ。 「勉強、頑張ってくださいとか、書いてあったんだよな。手紙。なんか嬉しかったな。あれ」 名前なかったけど、字でわかった。と、言った。 「ホワイトデーに返さないと、と思ったんだけど、渡せなかったな。これ。セイナっぽいと思って買ったんだけどな。チョコ渡してなくてもいいよ。やる」 人差し指に通す。すっと抵抗なく、指に納まった。 「まあ。高校生の安モノだけど。記念にもらっていけよ」 そう言って笑ったけど、デザイン的には、古さを感じることもなく、むしろ、今のあたしがはめても違和感がなかった。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!