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「え?」と、クニヒロとドクロの指輪を何度も交互に見た。
「お前、憶えてる?」
「なに?」
「高校のバレンタイン」
確か、俺が高三のときかな。受験のときだったから。と、続けて言った。
「あ……」
「あんとき、お守りとチョコくれただろ」
「あげたっけ」
「もらったって。家のポストにいれてくれてただろ?」
「あたしじゃないよ」
咄嗟に嘘をついてしまったのは、無記名でいれたはずだったからだ。
「勉強、頑張ってくださいとか、書いてあったんだよな。手紙。なんか嬉しかったな。あれ」
名前なかったけど、字でわかった。と、言った。
「ホワイトデーに返さないと、と思ったんだけど、渡せなかったな。これ。セイナっぽいと思って買ったんだけどな。チョコ渡してなくてもいいよ。やる」
人差し指に通す。すっと抵抗なく、指に納まった。
「まあ。高校生の安モノだけど。記念にもらっていけよ」
そう言って笑ったけど、デザイン的には、古さを感じることもなく、むしろ、今のあたしがはめても違和感がなかった。
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