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クニヒロはそっと、あたしの腕を離した。
「セイナ」
「あたしも一緒に行きたい」
「お前、酔いすぎ」と、振り返ったクニヒロは笑っていた。
だから、泣きたくなった。
「あたしね。ずっと……」と、言いかけると、「そっちにベッドあるから。先寝てろ」と、顎でさす。
「え?」
「すぐ帰ってくる」
あたしの腕をとると、ベッドまで連れて行った。一緒に腰を落として、スプリングが揺れる。
「クニヒロ」
「すぐ帰ってくるから」
諭すように言うから、あたしは、許せなかった。クニヒロのシャツの裾を引っ張って、嫌だ、と横に首を振った。
困ったなとクニヒロは呟いた。
子供になりたい。子供になりたい。
泣きじゃくって、困らせる子供になりたい。
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